クリープハイプ『イト』の歌詞の意味や魅力を解説!(曲考察)

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2017年に公開された映画『帝一の國』。その主題歌として起用されたのが、クリープハイプの楽曲『イト』です。
疾走感のあるポップサウンドに乗せて、鋭く心を突き刺すような歌詞が印象的なこの曲は、映画の世界観とも絶妙にリンクしており、多くのリスナーの心を掴みました。

今回の記事では、『イト』という曲が持つ深い意味や魅力について、歌詞やメロディ、タイトルに込められた意図を読み解きながら紹介していきます。

『イト』というタイトル。一見すると「糸」と連想する人が多いかもしれませんが、もうひとつの読み方「意図」も含まれているように思えます。

「糸」は人と人とのつながりや縁を連想させ、「意図」は心に秘めた思いや計画、そして葛藤を意味します。このダブルミーニングはまさに、歌詞全体に通じるテーマ。

人とのつながりの中で感じるもどかしさや、自分の想いが思うように伝わらない苦しさ。そういった“見えない何か”に絡め取られそうになりながらも、それでも進もうとする姿が、この一言のタイトルに集約されています。

“誰かの手に操られる自分”のメタファー

冒頭の、

この度はどうも 末長くどうか
誰かの糸で ぎこちないお辞儀

という部分では、まるで操り人形のように、自分の意志ではないところで動かされている様子が描かれています。社会や他者の期待、人間関係の中で「自分の足で立つことの難しさ」が示唆されており、共感を呼ぶ感情が込められています。

繋がりの矛盾

続くサビの部分、

だからいくら寄り添っても 寄り添った分絡まって
だから待ってもそのまま 身動き取れない

ここでは、誰かと“近づきたい”という思いが、逆に関係を複雑にし、身動きが取れなくなるという矛盾が描かれています。これは「恋愛」だけでなく、「友情」「家族」「社会的立場」など、あらゆる関係性に通じるものです。

希望の提示と決意

しかし、楽曲は諦めでは終わりません。

いつかこの糸が千切れるまで 今は踊れ手のひらで
どうか重ねた手の温もりで 何度でも探せ

“踊れ”という言葉が登場することで、閉塞した状況でも“その中で自分らしく動こう”という前向きな決意が表れます。千切れるかもしれない糸に怯えながらも、それでも「重ねた手の温もり」で繋がることを信じて動き続ける。その姿が非常に健気で、美しく響きます。

終盤の深み

終盤の、

いつか君の糸が見えるまで
いつか君の意図が見えるまで

というラインは、タイトルを回収しつつ、他者の真意に近づこうとする切実な願いが感じられます。関係性の中で、「わかりあいたい」と願う心の奥底を、静かに、しかし力強く訴えてくる印象的な一節です。


映画『帝一の國』は、エリート高校を舞台に、生徒会長の座を巡る熾烈な争いを描いた作品です。友情や裏切り、理想と現実の狭間で揺れる若者たちの姿は、『イト』の歌詞と重なる部分が多くあります。

曲中の「絡まったままほどけないなら いっそこのままで」という一節は、人間関係の難しさと、それでも切れずに続く“縁”の象徴のようです。

尾崎世界観の歌詞は、時にえぐるようにリアルで、時に詩的で抽象的。『イト』でもその魅力は存分に発揮されています。
「一言で終わるような話を 二言で話すからややこしくなる」という一節は、言葉の持つ危うさや、思いを伝える難しさを端的に表しています。

ポップなメロディに対し、内面的で繊細な歌詞。このギャップが、聴く人の感情を引き込んで離しません。テンポの良さがあるからこそ、歌詞に込められた「言えない思い」や「見えないつながり」の切実さが際立つのです。

『帝一の國』のラストシーンで『イト』が流れる瞬間、その歌詞がまるで登場人物たちの心情を代弁しているかのように響きます。映画を観たあとに曲を聴くと、より深く物語の余韻を味わえるはずです。

『イト』が完成するまでには、尾崎世界観ならではの独特な制作プロセスがあったと言われています。

尾崎は以前のインタビューで、この曲を「つながりたいのに、うまくつながれない人間のもどかしさを、無理に言葉で説明するのではなく、音と言葉の“隙間”で描きたかった」と語っています。

実はこの曲、映画のために書き下ろされたものではあるものの、最初に渡された台本を読んで尾崎が感じたのは「これは自分の中にずっとあった感情と重なる」という直感的な共鳴だったとか。

さらに印象的なのが、歌詞を先に完成させたあと、そこにメロディを乗せるのではなく、“歌詞がどう聞こえるべきか”という観点で、逆にメロディを削っていったというエピソード。
まるで“余計な糸をほどくように”、言葉の温度を丁寧に整えていったそうです。

リリース当時から現在に至るまで、『イト』は多くのファンに愛され続けている楽曲です。

「この曲を聴くと、あの頃の自分を思い出す」
「糸のように繊細な気持ちを代弁してくれている」

といった声も多く、特に10代・20代のリスナーからの共感が厚いのも特徴的です。

また、尾崎世界観のインタビューでも『イト』について「不器用なまま、それでも誰かとつながっていたい気持ちを描いた」と語られており、その誠実なメッセージがリスナーに届いていることがわかります。

『イト』は、目に見えないつながりや言葉にならない感情を描いた、クリープハイプらしい一曲です。

「糸」と「意図」——人と人をつなぐ見えない線と、それぞれが抱える思い。それらが絡み合いながらも前に進もうとする姿が、この曲には込められています。

あなたにとって、『イト』はどんな曲ですか?
ぜひ、改めてこの曲を聴いて、自分自身の“つながり”を見つめ直してみてください。

以上、クリープハイプ『イト』についての紹介および解説記事でした。

今回の記事は、私が記事やネット上で調べた情報を基に、自分なりの解釈や考察を加えた内容です。この曲の魅力を少しでも伝えることができていれば幸いです。

クリープハイプは、『イト』以外にもこれまでに100曲以上の楽曲をリリースしています。ぜひこの曲をきっかけに、他の曲にも耳を傾けてみてください!


引用元一覧:

  • クリープハイプ『イト』 / Universal Sigma

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