Mrs. GREEN APPLE『クスシキ』の歌詞の意味や魅力を解説!(曲考察)──『薬屋のひとりごと』の世界と響き合う楽曲

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Mrs. GREEN APPLEの『クスシキ』は、TVアニメ『薬屋のひとりごと』第2期第2クールのオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲。不思議で神秘的な世界観の中に、確かなエネルギーと感情のうねりを感じさせる一曲です。

この記事では、そんな『クスシキ』の歌詞や音楽性に込められた意味を、バンドメンバーが語った裏話やアニメとのリンクにも触れながら、深掘りしていきます。


『クスシキ』というタイトルは、古語の「奇しき(くすしき)」に由来すると考えられます。「不思議な」「神秘的な」という意味を持ち、まさに『薬屋のひとりごと』の物語にぴったり。後宮という閉ざされた世界の中で、謎を解き明かしていく主人公・猫猫(マオマオ)の視点とも重なります。

音の響きにも静かな緊張感と優美さがあり、アニメの時代設定や空気感と非常にマッチしています。この言葉をタイトルに選ぶセンスからして、すでに“物語と共鳴する楽曲”であることが伝わってきます。


『クスシキ』の歌詞には、「命の儚さ」「偶然の奇跡」「誰かと出会うことの意味」といった、哲学的で感情的なテーマが織り込まれています。これらは『薬屋のひとりごと』のストーリーの中核を成すテーマとも重なっており、まるで楽曲が作品の“もうひとつの語り部”のように機能しています。

4月7日放送のラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」のコーナー「ミセスLOCKS!」では、メンバーがこの楽曲について語りました。作詞作曲を担当した大森元貴さんは、リハーサルの段階で「デモよりもさらにフレーズを難しくブラッシュアップした」と話し、完成形に向けた試行錯誤の一端を明かしています。

また、藤澤涼架さんが「『なんていうジャンル?』って思った」と語った通り、ジャンルの枠にとらわれないサウンドも魅力的。琴や二胡など、東洋的な音色を取り入れつつ、ベースはしっかりバンドサウンド。若井滉斗さんは「また新しい雰囲気の曲だな」と評し、「めっちゃカッコいい!」と語っています。


『クスシキ』の歌詞は、物語的な展開よりも、感情の波や内面の思索を断片的に描いていく構成となっており、それによって聴く人自身の記憶や感情と交差しやすい作品となっています。

1. 真実と偽り、人間の複雑さ

「摩訶不思議だ
言霊は誠か
偽ってる彼奴は
天に堕ちていった
って聞いたんだけども
彼奴はどうも
皆に愛されてたらしい」

この冒頭の一節では、「言霊」「誠」「偽り」といった言葉が並び、真実と虚構の境界が問われています。同時に、「偽っていた」者が「愛されていた」という事実を描くことで、人間の矛盾と多面性を浮かび上がらせています。善悪や真偽の単純な二元論では語れない、人間という存在の奥深さが滲み出ています。

2. 愛と罪、感情のねじれ

「愛してるとごめんねの差って
まるで月と太陽ね
また明日会えるからいいやって
何一つ学びやしない魂も」

「愛してる」と「ごめんね」は一見対極の言葉ですが、どちらも深い感情に基づいて発せられることがある点で共通しています。その微妙な違いを「月と太陽」という対照的な天体で比喩的に表現することで、言葉と感情のずれを繊細に描いています。また、「学びやしない魂」という言葉からは、感情の反復、自己矛盾、未熟さといった人間らしさが表れています。

3. 「奉仕」としての愛

「奉仕だ
こうしたいとかより
こうして欲しいが聞きたい
思いの外 自分軸の世界
一周半廻った愛を喰らいたい
私に効く薬は何処だ」

ここでは、愛というものを「奉仕」として捉える視点が示されます。自己中心的な愛ではなく、相手の求めるものに耳を傾ける愛。それが「一周半廻った愛」である、という表現は非常に詩的であり、未熟な愛を乗り越えた先にある深い関係性の姿を表しているようです。「私に効く薬は何処だ」という問いには、救いと癒やしを求める切実さがにじみ出ています。

4. 輪廻と魂の記憶

「貴方をまた想う
今世も」

「貴方をまた想う
来世も」

この二つのフレーズは、作品全体の中心的なモチーフと考えられる「魂の記憶」「転生的な愛」を象徴しています。愛する存在とのつながりは一度限りのものではなく、時空を超えて繰り返されるというスピリチュアルな視座が、この楽曲に静かな永遠性をもたらしています。

5. 別れと再生、静かな肯定

「めくれば次の章
石になった貴方の歌を
口ずさんで歩こう
ひとりじゃないって笑おう」

「分厚めの次の本
病になった私の歌を
口ずさんで歩こう
ひとりの夜を歩こう」

人生や恋愛を「本」や「章」にたとえた表現が、非常に印象的です。「石になった貴方」「病になった私」という描写は、それぞれ失われた存在や痛みの象徴でありながら、その“歌”を「口ずさんで歩こう」という姿勢は、喪失の先にある再生や歩みを静かに肯定しています。

6. 終幕の美しさと再確認されるテーマ

「愛してるよ
ごめんね
じゃあね
まるで夜の太陽ね
クスシキ時間の流れで
大切を見つけた魂も
貴方をまた想う
来世も」

最終節では、「愛してる」「ごめんね」「じゃあね」といった言葉が並置され、それぞれが別れと愛の両義性を帯びていることが表されています。そして「夜の太陽」という逆説的な比喩が、矛盾を内包した感情を詩的に浮かび上がらせます。ここでようやくタイトルの「クスシキ」が登場し、それが「時間の流れ」や「魂の旅」と深く結びついていたことが明らかになります。

Mrs. GREEN APPLEの表現力の高さを感じさせるのが、やはり“音の多層性”。メロディ、歌詞、アレンジすべてが豊かでありながら、アニメの物語にも寄り添っている点が秀逸です。

ライブ演奏について、若井さんは「これ、ライブでやるの怖いね(笑)」と語るほど難易度が高く、「バチバチなんじゃない?」と語った通り、ステージ映えも期待される一曲。バンドアンサンブルとしての挑戦も詰まったナンバーです。

『クスシキ』のMVは、全編フルCGという意欲的な作品。大森さんは「監督や映像チームとめちゃくちゃ話し合った」と語り、自ら絵コンテを描いたり、CGやワイヤーアクションを提案したとのこと。MV内で若井さんが使っていた「琵琶大剣みたいな」武器は実際に重かったようで、筋肉痛になったというエピソードも。
藤澤さんは「物語をちゃんと作っていきました」と語っており、楽曲だけでなくMVでも「世界観を語る姿勢」が感じられます。

『ビターバカンス』や『ダーリン』など、最近の代表曲と比べても『クスシキ』は異彩を放っています。静と動のバランス、伝統楽器の導入、そしてアニメという文脈での“物語性”は、今まで以上に深く、奥行きのある表現に挑戦していることがうかがえます。


『クスシキ』は、アニメ『薬屋のひとりごと』の世界観に寄り添いながらも、独立したアートとしても完成度の高い作品。バンドとしての挑戦、音楽的な冒険、そして聴く人に問いかける深いテーマ……それらが見事に融合した一曲です。

「不思議だけど、なぜか心に残る」。そんな余韻を残してくれるMrs. GREEN APPLEの新境地、ぜひ耳を傾けてみてください。


以上、Mrs. GREEN APPLE『クスシキ』についての紹介および解説記事でした。

今回の記事は、私が記事やネット上で調べた情報を基に、自分なりの解釈や考察を加えた内容です。この曲の魅力を少しでも伝えることができていれば幸いです。

Mrs. GREEN APPLEは、『クスシキ』以外にもこれまでに100曲以上の楽曲をリリースしています。ぜひこの曲をきっかけに、他の曲にも耳を傾けてみてください!


引用元一覧:

  • Mrs. GREEN APPLE『クスシキ』 / EMI Records

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